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2015年 05月 01日
〒820-0042 福岡県飯塚市本町17-42 0948-22-3514 定休日: 月曜日 営業時間: 15:00-22:00 「暖簾が掛かっとったらいいんよ」 桜からつつじへゆっくりと模様を替えてゆく初夏の午後。麦茶とおむすびを片手に福岡市内から急行バスに揺られること約1時間。メイン通りを数分進むと、左手の路地には「だるま湯」の小さな袖看板。正面は古きよき入母屋造りの千鳥破風、「炭鉱都市」筑豊に現存する唯一の銭湯でつい「ただいま」と口にしたくなる瞬間である。開店まであと数分、暖簾をくぐると既に湯あがりでくつろぐみなさま。「暖簾が掛かっとったら入っていいんよ」と手招きしてくださったのは、溌剌とした近所のおばあさま。 ドアを開けると三和土に大きめの番台があり、出迎えてくださったご主人の笑顔は貫禄がありつつも実にあたたかい。脱衣場にあがると、白い木張りの天井にこっくりとした色味の木製脱衣棚。創業(昭和5年)当時から大切に磨いてきた「顔」であり、漢数字が書かれた扉には鍵はついていない。カーテンのない低めの番台やついたては、女湯にとってマイナスに受けとられることもあるだろうが、だるま湯では逆に「眼がゆきとどいていて安心」という安定した空気が濃い。歴史ある由緒正しき空間が紡いできた味わいには「雑味」がないのだろう。 石炭で沸かしていた「炭鉱都市」銭湯の釜跡 木製棚を脱衣場の顔とするならば、浴室の顔は何といっても円型の湯船だろう。薄荷色を基調とした清楚で美しい床タイルの中心に凛としてたたずむ丸い湯船。その縁から底面にいたるまで紺色や藍色の豆タイルが細やかなにあしらわれ、澄みわたる色彩の鮮やかなコントラストを前に深いため息が出てしまう。水道水を重油で沸かした白湯の湯温は、温度計はないものの体感で44度前後。とはいえ、なめらかで肌あたりが心地いいのは、セラミック沪材を通した遠赤外線鉱泉水が芯まであたためてくれるから。「湯つぼであったまってほしい」という想いがこめられているので、じっくりつかりながら木枠のガラス戸越しに心ゆくまで美しい空間を堪能してほしい。中央には湯船、そして男女壁沿いには湯量たっぷりのシャワーカランが6席。 そして注目していただきたいのは、浴室奧にまたがっているタイルの装飾がほどこされた突出した部分。これは石炭を燃料として沸かしていた当時(約40年前まで使用)の石炭釜の名残であり、大きかったため飛び出ていたものを残してあるのだとか。炭鉱華やかなりし時代の足跡である。ガラス戸を開けて、段差を降りたところにたたずむ愛らしい湯船。柔らかいお湯につかりながら、のびやかで高い天井の湯気抜き、そして境壁のすりガラスや清潔に整えられた脱衣場を愛でていると、だるま湯という銭湯が初代から受け継いできた清々しい空気に自分は相応しいふるまいをしているだろうか、と心が内へと向いてゆく。いい銭湯とは身体を清め、自然とくつろぐという心を育ててくれている。 全盛期には町内ごとにあったそうだが、貴船湯の廃業(約10年前)を以て筑豊ではだるま湯だけとなり「がんばってほしい」という声に支えられて、浩一さんと千鶴子さんのご夫妻が毎日交代で番台に座っている。「清潔、そして優しいお湯であったまってほしい」が信条のおふたり。番台前でお話を伺っていたときのこと。時折男湯から「牛乳」というかけ声が聴こえてくると、千鶴子さんが針のついた道具で紙のふたをスッと開けて丁寧に手を添えて「どうぞ」と阿吽の呼吸で手元に置いてゆく動作が無駄のない作法を見学しているようで、こうした細やかな「やりとり」がだるま湯という「輪郭」を彩っているのだろう。いい銭湯は、心の保温効果が高い。 (文責:masami)
by yunotashinami
| 2015-05-01 00:00
| 全国浴場新聞(連載)
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